ネオンが滲む夜の街路樹の下、彼は足早に歩いていた。
黒いジャケットの背中には、大きな星のマーク。揺れるオレンジのストラップが、焦る鼓動みたいに跳ねている。
「おーい、ちょっと待てよ!」
差し出したのは、赤い箱。小さなハート柄に、金色のリボン。
震える指先が、冬の空気よりも冷たい。
今日は、バレンタイン。
彼は振り返った。
鋭い目つき。少し赤い頬。怒っているようにも、困っているようにも見える表情。
「……なんで、追いかけてくるんだよ」
強がった声。だけど、その足は止まっている。
「渡したいからに決まってるだろ」
息を切らしながら、箱をぐっと前に出す。
去年は渡せなかった。
友達のままが楽で、壊れるのが怖くて。
でも今年は違う。逃げる背中を、もう見送らないと決めた。
街の上を、流れ星がひとつ走った。
彼の視線が、赤い箱に落ちる。
破れたデニムのポケットに突っ込んだ手が、ゆっくりと抜ける。
「……甘いの、苦手なんだけど」
「知ってる。ビターだよ」
沈黙。
ネオンが二人の間を青とピンクに染める。
やがて彼は小さく舌打ちして、差し出された箱を受け取った。
「……ビターでも俺には甘すぎるんだよ。」
背を向けたまま、少しだけ肩越しに笑う。
その横顔は、さっきよりずっと柔らかかった。
流れ星の軌跡が消えるころ、
二人の距離は、もう追いかけるほど離れてはいなかった。

※このストーリーとイラストはAIで生成したものです。
